平成23年6月吉日
日本血管外科学会
理事長 重松 宏 先生 侍史
厚生労働省委託事業
がんのリハビリテーション研修委員会
リンパ浮腫研修委員会 (公印省略)
委員長 辻 哲也
リンパ浮腫研修委員会における合意事項の広報のお願い
謹啓
貴会におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。また、貴会員の先生方に当委員会へ参加いただきご指導いただいておりますこと厚く御礼申し上げます。
さて、今回、当委員会におきましては、リンパ浮腫の予防や治療における重要事項および用語に関して統一が必要と考え、別紙合意事項を作成いたしました。わが国の標準的なリンパ浮腫治療を確立するためにはこれらの認識を共有することが重要と考えており、貴会におきまして広報(学会誌やホームページでの掲載等)をお願い申し上げる次第です。
何卒ご高配を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
謹白
事務窓口(担当:橋)
「がんのリハビリテーション研修委員会・リンパ浮腫研修委員会」事務局
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL:03(3265)1907 Fax:03(3265)1909 e-mail:s_jigyou@lpc.or.jp
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5 砂防会館5階
受付時間:月~金 9:00~17:00
リンパ浮腫研修委員会における合意事項
1)リンパ浮腫の予防におけるリンパドレナージ、弾性ストッキング・スリーブの扱い
現在のところ「リンパドレナージと弾性ストッキング・スリーブなどの圧迫療法が予防に有用」というエビデンスはない。
乳がんや子宮がんなど婦人科がんの手術後にリンパ浮腫の予防に必要だからという理由で、リンパドレナージや弾性ストッキング・スリーブをすべての患者に指導し、施行を義務付けている施設がある。しかし、強制されている患者には大きな苦痛となるためこれはおこなうべきではない。
2)リンパ浮腫治療における日常生活指導の重要性
従来、リンパ浮腫治療には「複合的理学療法」が有用とされてきたが、これのみでは不十分であり、長時間の立ち仕事を避ける、時に患肢を挙上するなどの日常生活指導を加えることが重要である。したがって、「複合的理学療法」に日常生活指導を加えた「複合的治療」(または「複合的理学療法を中心とする保存的治療」)がリンパ浮腫に対する標準的治療である。
3)リンパ浮腫治療におけるシンプルリンパドレナージの扱い
通院治療が主体であり、用手的リンパドレナージを実施できる医療施設が少ない日本では、患者が自ら実施するシンプルリンパドレナージ(=セルフリンパドレナージ)や家族・介助者が実施するシンプルリンパドレナージが一般的に行われているのが現状である。しかし、その効果についてはエビデンスが不十分であり、意義、どのような患者・病態に必要か、などの適応や具体的内容、禁忌などを今後確立していく必要がある。
4)リンパ浮腫治療における薬物療法
現時点ではリンパ浮腫単独に対する効果的な薬剤はない。進行再発期と緩和医療期では全身浮腫に対して、その病態に応じて種々の薬剤を使用する。
5)用語の統一
本研修委員会においてリンパ浮腫治療に関する用語を統一した(これまで用いられてきた単語に併記も可)。
| 一般的に用いられている用語 | 統一した用語 |
|---|---|
| 複合的理学療法、複合的治療、CDT、CDP、CPT | 複合的治療または複合的理学療法を中心とする保存的治療 ※正確には「複合的理学療法」と同一の概念ではない(上記2参照) |
| 徒手リンパドレナージ、用手的リンパドレナージ、リンパ誘導マッサージ、マニュアルリンパドレナージ、MLD、DLM | 用手的リンパドレナージ(MLDの和訳) |
| セルフマッサージ、セルフリンパドレナージ、セルフドレナージ | セルフリンパドレナージ |
| シンプルリンパドレナージ | シンプルリンパドレナージ(SLDの和訳) |
| 圧迫療法、圧迫 | 圧迫療法 |
| 弾性着衣、圧迫着衣 | 弾性着衣 |
| バンデージ、弾性包帯 | 弾性包帯 |
| バンデージ療法、リンパバンデージ、バンデージ、bandaging | 多層包帯法(MLLBの和訳)、包帯法 |
| 圧迫下での運動、リンパエキササイズ | 圧迫下での運動 |
| 間欠的空気圧迫ポンプ、空気波動マッサージ器 | 間欠的空気圧迫装置 |
| 間欠的空気圧迫療法、IPC | 間欠的空気圧迫法(IPCの和訳) |
| 麦穂帯、8(の)字帯、8の字巻き、タケノコ巻き | 8の字帯(麦穂帯) |
付記:「マッサージ」という用語は患者に誤解を招きやすいので、「ドレナージ」と表現する
以上