原著 日血外会誌 11:69-78,2002 

臓器保護からみた胸腹部大動脈瘤手術症例の検討

古謝 景春,國吉 幸男,宮城 和史,下地 光好,上江洲 徹,新垣 勝也,山城  聡,摩文仁克人,瀬名波栄信,佐久田 斉
琉球大学医学部第 2 外科


要  旨:1978年 5 月から2001年12月までに当科で手術治療を行った胸部大動脈瘤症例は341例であり,うち1987年 7 月以後積極的に人工血管置換術を施行した胸腹部大動脈瘤手術47例(13.8%)を今回の検討の対象とした.
 47例の瘤形態は28例が真性瘤,19例が解離性瘤であり,Crawford分類では I 型18例,II 型7 例,III型12例,IV型10例であった.なお解離性瘤19例中 7 例はMarfan症候群症例であった.47例中 9 例は破裂または切迫破裂に対する緊急手術であり,また 9 例では以前に他部位の大動脈瘤に対する人工血管置換術の既往を有していた.全例に大動脈遮断の補助手段として遠位側灌流法(PA-FAまたはF-Fバイパス)を用い,脊髄保護は分節的遮断法を,また腹部臓器保護法として1994年 2 月以降臓器灌流法を採用した.47例中39例(83%)に肋間動脈または腰動脈の再移植を行い,30例(64%)に腹部主要分枝の再建を行った.47例中 5 例の入院死亡(入院死亡率10.6%)をみたが,5 例中 2 例は緊急手術,他の 2 例は再手術症例であった.死亡症例を含めて全例に対麻痺・不全麻痺の発症は認めていない.
 胸腹部大動脈瘤手術の最も危惧すべき合併症は対麻痺の発症であるが,遠位側灌流法を用いた分節的遮断法と腹部臓器灌流による確実な肋間動脈・腰動脈再移植法は本症発生防止に有用であると考えられた.

索引用語:胸腹部大動脈瘤,臓器保護,対麻痺