F-1-6
第30回 日本血管外科学会総会
Adamkiewicz動脈,前脊髄動脈および肋間・腰動脈の組織学的検討
札幌医科大学第二外科
藤澤 康聡,森下 清文,安倍十三夫
 【目的】胸部下行・胸腹部大動脈瘤手術後の対麻痺の発症は,下部脊髄の栄養血管である前脊髄動脈の術中・術後の虚血が原因とされており,その血流の多くは,肋間動脈・腰動脈の背枝の枝である大前根動脈(アダムキービッツ動脈)から供給される.今回われわれは,肋間・腰動脈起始部から前脊髄動脈までの一連の末梢動脈を組織学的に検索し,その特異性について検討したので報告する.
 【対象および方法】ホルマリン固定した84体の実習用成人解剖体を対象とした(年齢階層を合せた71体の大動脈瘤を有しない解剖体,および13体の未破裂胸腹部・腹部大動脈瘤を有する解剖体).脊髄と動脈系を一連に摘出し,切片を固定した後,パラフィン包埋・H-E染色を行い,光学顕微鏡下に血管内腔・内膜・中膜それぞれの領域の面積を計測した.
 【結果】アダムキービッツ動脈においては,内腔が拡張していても,その内腔に対する内膜弾性板複合体(内膜+内弾性板;IELI)の比率が一定であった.同様の所見は前脊髄動脈でも得られた.
 内膜弾性板複合体IELIの面積を個体ごとに偏差値で表すと,アダムキービッツ動脈およびアダムキービッツ動脈が注ぐ尾側の前脊髄動脈において,IELIが厚い症例が存在し,それらの症例では,中膜も厚い傾向があった.一方同部位のIELIが薄い症例では,中膜も薄い傾向があった.
 【考察・結語】以上のような所見から,アダムキービッツ動脈では,その中膜の変性程度に関わらず,血流の増大に応じて内膜弾性板複合体が一方向的に肥厚してその壁張力を維持しており,肋間・腰動脈→アダムキービッツ動脈→その支配域の前脊髄動脈 という中膜・内膜変性の進展が推測される.つまり再建しても予後不良が予測される群と,その進行過程にある群が存在すると考えられる.