H-102
第30回 日本血管外科学会総会
大腿-膝窩動脈バイパス術後人工血管感染に対し,大腿外側経路の非解剖学的バイパスを施行した 1 例
近畿大学医学部心臓外科1
芙翔会木山病院外科2
北山 仁士1,金田 敏夫1,皐  弘志2
佐賀 俊彦1
 症例は60歳,男性.右外腸骨動脈狭窄,左右浅大腿動脈閉塞に対し53歳時に人工血管を用いた右腸骨-大腿-膝窩動脈バイパス及び左大腿-膝窩動脈バイパス術を,その 2 年後に左側人工血管閉塞のため再バイパスを受けている.今回は左大腿-膝窩バイパス閉塞による左側間欠性跛行に対し,新たにePTFE人工血管を用いた再バイパスを行った.(閉塞人工血管は放置)術後経過は良好であったが術 4 週のIV-DSA施行翌日から発熱,左大腿腫脹,白血球増多,CRPの上昇が出現した.AMK,FMOXの投与で解熱し,血液培養,膝上部穿刺液培養も陰性であったため,外来での経過観察としたが,術 2 ヶ月ごろから再び左大腿腫脹,発熱が出現した.試験開創で人工血管周囲に膿瘍が認められたため,中枢部は縫工筋でラッピングし,末梢部は開放して洗浄を行った.起炎菌はMRSEであった.4 週間イソジン洗浄を続けたが完治しないため感染人工血管の除去を行った.感染人工血管は開存していたため,まず左外腸骨動脈から膝窩動脈の末梢部へのバイパスを行った.この際,人工血管を汚染創から隔離するため,腸骨陵を経て,大腿外側から膝下部へ至る皮下経路を選択した.バイパス後,感染人工血管及び初回手術時の人工血管を切除した.術後,感染兆候は消失し,術後 1 年で左下肢バイパスは開存している.【結論】下肢バイパス後の人工血管感染は,感染人工血管を除去しなければ完治は困難であるが,末梢への血行を維持しなければ下肢の切断を余儀なくされる可能性がある.新たなバイパスを汚染巣から隔絶して留置するため,非解剖学的経路をとる必要があるが,その選択肢は多くない.今回我々は,大腿外側の経路を用いたが,術後経過は良好で,本症に対し有用な方法であった.