H-129
第30回 日本血管外科学会総会
プロテインS欠損症が発症に関係した大網梗塞の 1 例
那覇市立病院外科
古堅 智則,久高  学,平良 一雄
川野 幸志
 【はじめに】プロテインS欠損症は,若年者における血栓症の原因としてあげられる.今回,われわれは大網梗塞を発症し,その後の精査でプロテインS欠損症と診断した 1 例を経験したので報告する.
 【症例】26歳,男性.17歳時に深部静脈血栓症,肺梗塞の既往がある.この際のCTで,血栓が腸骨静脈分岐部から下大静脈まで及んでいたために他院で下大静脈フィルターを留置されている.その後,ワーファリンを投与され経過観察中であったが,平成13年 7 月より自己中断していた.同年 8 月25日に腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診し,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術となった.開腹所見では大網の静脈に広範囲の血栓を認め,周囲の大網は壊死に陥っていた.また血性腹水を認めたが他臓器に異常所見は認めなかった.静脈血栓症による大網梗塞と診断し,大網切除術を施行した.以前にも静脈血栓症の既往があることから凝固異常症の存在が疑われ,凝固系の精査を施行し血中プロテインS値が39%(基準値65~135%)と低下していたため,プロテインS欠損症と診断した.術後よりワーファリン 3mgの投与を再開し,現在まで再発を認めていない.
 【考察】大網梗塞は稀な血栓症であり,大網内の静脈に血栓が形成されることにより発症する疾患である.また,プロテインS欠損症は静脈血栓症を発症しやすいとされる.静脈血栓症が再発する症例や,まれな静脈血栓症を発症した症例では,基礎疾患に凝固異常症が存在する可能性があることを念頭に置く必要がある.さらに凝固異常症による静脈血栓症では再発防止に備え経口抗凝固薬の継続投与が必要である.