H-2-1
第31回 日本血管外科学会総会
冠動脈疾患を合併した胸部大動脈瘤の一期的外科治療
名古屋大学大学院医学系研究科胸部機能外科学
吉川 雅治,斉藤 俊英,石川  寛
竹中 拡晴,荒木 善盛,成田 裕司
前川 厚生,竹村 春起,泊  史朗
佐々木通雄,角 三和子,臼井 真人
秋田 利明,碓氷 章彦,上田 裕一
 【目的】冠動脈疾患を合併した胸部大動脈瘤手術においては,morbidity, mortalityの点からその成績は必ずしも良好とは言えず,脳保護,心筋虚血対策,大動脈再建術式などが課題である.冠動脈バイパス術(CABG)同時施行胸部大動脈瘤手術症例について検討した.【方法】1997年 1 月から2002年12月までに施行した125例の胸部大動脈瘤手術例のうち,CABG同時施行の 8 例を対象とした.症例は男 5 例,女 3 例,年齢平均68歳であり,大動脈瘤径は平均52.8mm(30~70)で,真性瘤 5 例,解離性 2 例,解離合併真性瘤 1 例であった.冠動脈病変は,1 枝 1 例,2 枝 5 例,3 枝 2 例であった.【結果】大動脈再建はtotal arch replacement 5 例(うちarch first+elephant trunk 3 例),hemi-arch replacement 1 例,stent graft 2 例,CABGは 3 枝 2 例,2 枝 2 例,1 枝 4 例であり,平均バイパス枝数は1.75枝であった.補助循環は超低体温循環停止(DCA)および逆行性脳灌流(RCP)が 7 例,両腋窩送血 1 例であり,体外循環時間は227分(168~285),心虚血時間は137分(101~163),DCA38.7分(28~61),RCP22.3分(6 ~47)であった.気管内挿管時間26.8時間(10~65),ICU滞在は2.6日間(1 ~ 6)であった.手術関連合併症では出血再開胸 3 例,脳梗塞 2 例であったが,手術死亡はなく,8 例とも独歩退院した.入院中の術後左室駆出率(EF)は平均64.2%(54.9~80.0)であり,術後グラフト造影では,同意を得られなかった 2 例を除き,バイパスグラフト全ての開存を確認した.【結語】冠動脈疾患を合併した胸部大動脈瘤手術では冷却中あるいは復温中にCABGを施行することで,時間的手術侵襲を生じることなく,周術期心筋虚血障害を回避し,心機能,mortalityの観点から良好な成績が得られた.