I-17
第31回 日本血管外科学会総会
胸腹部大動脈内血栓に対する血栓除去の 1 例
岐阜大学医学部第一外科
水野 吉雅,松野 幸博,福本 行臣
梅田 幸生,島袋 勝也,高木 寿人
森  義雄,広瀬  一
 大動脈瘤あるいは大動脈解離を伴わない大動脈内血栓の形成とそれに起因する塞栓症はまれである.血栓塞栓症を繰り返す胸腹部大動脈内血栓に対し血栓除去を行った 1 例を報告する.症例は49歳の男性.5 年前に左大腿動脈急性閉塞に対し血栓除去が行われた.この際経食道エコーで胸部下行大動脈内血栓が指摘され,抗凝固療法(warfarin)で経過観察されたが,2 年前に近医で中止された.今回右下肢安静時痛を主訴に当科を受診した.動脈拍動は右大腿動脈とその末梢で触知不能,左膝窩動脈とその末梢で微弱だった.ABIは右側で測定不能,左側で0.59だった.大動脈造影で腎動脈分岐部より末梢の腹部大動脈の狭小化と右総腸骨動脈閉塞を認めた.心電図は洞調律で,心エコー上左房,左室内血栓はなかった.胸・腹部造影CT,胸・腹部MRIで胸部下行大動脈の末梢から大動脈分岐部までに壁在血栓と浮遊血栓を認めた.以上より胸腹部大動脈内血栓,右総腸骨動脈血栓塞栓症と診断した.胸部下行大動脈単純遮断下に大動脈を切開し,Forgatyカテーテルにて血栓を除去した.左大腿動脈,右大腿静脈に送・脱血管を挿入し,単純遮断時には大動脈末梢側からの血液逆流を吸引し右大腿静脈に挿入した脱血管より返血した.胆道ファイバースコープを大動脈内に挿入し,残存血栓の有無を直接確認した.また大動脈吻合直前に単純遮断時間が26分となったため,切開部位より末梢の大動脈を遮断し右大腿静脈脱血・左大腿動脈送血の部分体外循環を21分間併用した.左大腿動脈から挿入した血管内エコーで残存大動脈内血栓がわずかなことを確認した.両側大腿動脈を切開し,右腸骨動脈,右大腿動脈より末梢,および左大腿動脈より末梢の血栓除去を追加した.術後は両下肢の動脈拍動を良好に触知し,胸・腹部造影CTでも大動脈内血栓はわずかだった.抗凝固療法(warfarin)と抗血小板療法(aspirin,ticlopidine)を開始した.合併症なく,術後第17日退院となった.