PL-15
第32回 日本血管外科学会総会
血管外科診療における新たな展開
~バスキュラーラボの役割とQOL評価の意義~
JR仙台病院血管外科センター
市来 正隆,狩野 真一,菅原 弘光
蔡 景襄,大内 博
日本では,血管疾患の診断から治療までのほとんど全てを血管外科医が担ってきたと思われる.最近の検査機器の進歩に伴い,新たな技術の習得が必要となり,負担が増してきている.治療面でも高度な最新医療が発達してきたため,適切な治療法の選択には質的診断の向上が望まれる.増え続ける血管疾患に対して,診療の質を落とさないために約 3 年前にバスキュラーラボを設置した.単なる人手不足の解消策でなく,多くの情報の取得,整理,治療効果の判定などに大きく関与,貢献している.さらに重症虚血肢や破裂性大動脈瘤などのいわば病的に行き着いた血管の診療もしている血管外科医は,動脈硬化の早期診断,早期治療の必要性を痛切に感じているはずである.このような中,座して動脈硬化患者を待つのではなく,ある地域を対象に動脈硬化検診をした.971名の受診者(男443,女528,平均年齢73.9)でABPI,PWV,脈派,頸動脈エコー計測で動脈硬化症であったのが10.6%であった.22名(2.3%)がASOであった.AAAが3名発見された.バスキュラーラボを活用することで効率のよい検診が可能であった.一方,慢性血管疾患においは『今までのように日常生活ができること』こそが患者にとって最も重要なアウトカムと認識されるようになってきた.ASOが機能障害疾患であることを考える時,従来からのアウトカムである歩行距離やABPI,開存率,そして救肢率だけではQOLを正しく評価しているとは言えなくなってきた.AAAでは破裂を予防すればよいとする治療に術後のQOLも評価の対象になってきた.SF36によるASO のQOL評価(32症例)では,全ての尺度で国民標準値より低下していた.AAA(14症例)では精神的健康度が低下していた.研究はまだ緒についたばかりであるが,各種治療により健康に関連したQOL がどのように変化するかを知り,治療間の比較検討することで患者の視点に立脚した治療法選択の時代になったことは確かである.