VS3-3
第33回 日本血管外科学会総会
Yグラフトを一時的バイパスとして使用し瘤切除を施行した感染性腹部大動脈瘤の 1 例
岩手医科大学循環器医療センター心臓血管外科
中島 隆之,片岡  剛,岡  隆紀
鎌田  武,満永 義乃,坪井 潤一
福廣 吉晃,川副 浩平
 【目的】感染性腹部大動脈瘤に対し,in-situで人工血管置換を施行する際には,置換する前に感染瘤の徹底的な切除と洗浄が重要である.しかし,この間,下肢の虚血時間が長くなるとMNMSなどが問題となる.今回,Yグラフトを一時的バイパスとして使用し,感染瘤を切除し洗浄した後にin-situで大動脈(Ao)を置換した症例を経験したので供覧する.【症例】60歳,男性.突然の下腹部痛と38度台の発熱あり,近医を受診.腹部大動脈瘤の診断で当院に紹介となった.WBC 16,360/μl,CRP 13.9mg/dlと炎症所見を認めた.CTでterminal Aoに前方に突出する嚢状瘤を認めた.Aoの前後径は4.2cm.3 日後に感染性腹部大動脈瘤の診断で手術施行した.腹部正中切開にて開腹.terminal Aoに瘤を認め,後腹膜には炎症所見あり.まず瘤から中枢側へ離れた大動脈を 2 箇所で遮断し,その間で大動脈切断.中枢側AoにePTFE Yグラフト(14×7)を吻合した.次に右総腸骨動脈を 2 箇所で遮断し,その間を切断.末梢側にグラフト右脚を吻合した(右下肢虚血30分).グラフトは感染瘤から離して,腹腔外を経由させた.左脚も同様に腹腔外を経由させて左総腸骨動脈に吻合した(左下肢虚血45分).次にグラフトをイソジンガーゼで覆った後に感染瘤を切開した.瘤内には膿汁貯留あり.瘤壁を完全に切除し,超酸性水で洗浄した.切除,洗浄には80分を要した.その後にグラフトを腹腔内に入れ,両脚を短縮するように切断,再吻合した.そして横行結腸間膜を通した遊離大網でグラフトを完全被覆した.手術時間は 5 時間15分.4 病日から食事開始.術前動脈血培養からSalmonellaが検出されたため,感受性のある抗生剤を11日間静脈投与した.感染徴候の遷延なく術後28日目に退院した.【結語】Yグラフトを一時的バイパスとして感染瘤を切除,洗浄する方法では,短時間で下肢の還流を再開でき,かつ徹底的に感染瘤を切除,洗浄でき有用な方法と思われた.