原著 | 日血外会誌 9:17-21,2000 |
MRI画像による胸部大動脈および大動脈瘤の動態解析 -局所動脈壁のストレスの解析- |
熊谷紀一郎1,秋元 弘治1,吉田 出1 横山 斉1,貞弘 光章3,近江三喜男1,田林 晄一1 加藤 陽子2,松本 健郎2,佐藤 正明2
1 東北大学大学院医学系研究科心臓血管外科 2 同 工学部生体機能工学講座 3 青森県立中央病院 |
要 旨:胸部大動脈の血行力学的動態を探ることを目的に,非大動脈瘤例と真性弓部大 動脈瘤例を対象として,MRI心電図同期SPAMM tagging法を用いて局所の大動脈壁の壁運動を解析した.胸部大動脈のパラサジタル像にtaggingを行い,長軸方向の壁運動のパラメーターとして小弯側,大弯側におけるtagにより標識された大動脈壁上の交点の拡張期,収縮期の格子間距離の差より大動脈の曲げ率(λ)を測定した.円周方向のパラメーターとして大動脈の横断面に対してtagging法により局所大動脈壁のひずみ(ε)を測定した.非大動脈瘤例の測定結果から,曲げ率は,下行大動脈近位部で最大となり,下行大動脈横隔膜部で最小となった.ひずみは,下行大動脈近位部前壁,小弯側,下行大動脈横隔膜部にて大きくなる傾向にあった.以上より下行大動脈近位部および下行大動脈横隔膜部は他の部位と比較して血行力学的に負荷が大きくなっていることが予測された.また,真性弓部大動脈例のひずみは.動脈瘤辺縁部の立ち上がり角度が大きいほど大きくなる傾向を示し,立ち上がり角度の大きいものは瘤の拡大,破裂の危険性が高いことが示唆された.
索引用語:胸部大動脈瘤,MRI |
閉じる |