要　　旨：過去15年間に下大静脈（IVC）閉塞を9例経験した．症例は男性5例，女性4例，年齢は38～75歳，平均60歳であった．IVC閉塞の原因は腎癌のIVC進展4例，血栓症3例，乳癌のIVC転移1例，Budd-Chiari症候群1例であった．閉塞部位は腎静脈流入部より末梢3例，腎静脈流入部から肝静脈流入部まで4例，肝静脈流入部1例，腎静脈流入部から右房まで1例であった．手術方法は腎摘兼腫瘍血栓摘除術4例，IVC一右房バイパス術2例，血栓摘除兼パッチ拡大術2例，IVC結紮術1例であった．術後合併症なく全例軽快退院したが，血行再建7例中3例は術後3ヵ月～3年グラフト閉塞またはIVCが再閉塞した．悪性腫瘍5例中3例が術後6～13ヵ月癌死，残りの2例が1年6ヵ月～1年9ヵ月健在である．血栓症およびBudd-Chiari症候群4例は術後1年6ヵ月～8年10ヵ月健在である．
　結語：1）悪性腫瘍に伴うIVC閉塞は遠隔転移やリンパ節転移がなければ積極的に手術を行う，2）IVC血行再建開存例は臨床症状の著明な改善を認めた，3）IVC血行再建術後再閉塞をきたすことがあり長期の抗凝固療法が必要である．