症例 | 日血外会誌 9:39-43,2000 |
破裂性腹部限局型大動脈解離の1治験例 |
小山 照幸,阿部 裕之,北中 陽介,池下 正敏,山手 昇
聖マリアンナ医科大学心臓血管外科 |
要 旨:腹部限局型大動脈解離はまれであり0.4~4.1%とされ1~8),その破裂例はさらに少ない.われわれは,破裂性腹部限局型大動脈解離に対する外科治療例を経験した.症例は46歳女性で,1998年7月30日腹痛出現し,ショック状態となり当院救命救急センターに搬送された.腹部CTで腎動脈下腹部大動脈の限局性解離があり,偽腔の著しい拡大所見と,後腹膜腔内の大量の血腫を認めた.開腹すると腹腔内には出血はみられなかった.腎動脈下腹部大動脈は全長70mmにわたって,最大横径50mmと拡張していた.瘤を切開すると前面に解離した偽腔があり,内膜に約15mmの横走する裂孔が認められた.また解離した外膜の左側壁に破裂孔を認めた.16×8mmのY型人工血管にて解離部を置換した.病理所見では中膜層の解離と壁内血腫を認め,中膜層内のムコ多糖類の沈着が特徴的であり,いわゆる嚢胞性中膜壊死の所見であった.
索引用語:大動脈解離,腹部限局型大動脈解離,破裂性大動脈解離,嚢胞性中膜壊死 |
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