原著 日血外会誌 9:389-395,2000 

Minimally Invasive Vascular Surgery(MIVS)による腹部大動脈瘤(AAA)手術
-低侵襲血管外科手術の試み-

松本 三明,畑  隆登,津島 義正,濱中 荘平,吉鷹 秀範,中村 浩己,近澤 元太,篠浦  先,南  一司,大谷  悟
心臓病センター榊原病院心臓血管外科

要  旨:低侵襲血管外科手術Minimally Invasive Vascular Surgery(MIVS)によるAAA手術を,1998年4月より1999年3月までに,7例の患者に対して施行した.開腹術の既往がなく,他の腹部同時手術を施行しない,瘤径が5cm以下のAAAを対象とした.手術は,腹部エコーにて,AAAの頸部と大動脈分岐部を描出し,その位置を皮膚にマーキングした後,必要最小限の皮膚切開で行った.狭視野での手術を可能にするため,中枢側操作時には,jacknife体位として創を中枢側に牽引移動し,末梢側操作時には,水平位または軽度屈曲位にして,皮膚の緊張をとり末梢側に牽引移動した(術窓移動法,shit of window法と呼称).手術は通常のAAA手術と,同じ手順で行った.皮膚切開は8.0~13cmで平均10.3cmであった.次にMIVS症例と,同一術者が行ったconventionalな手術の連続15症例(CONV)とStudent's t testで比較検討した.MIVSはCONVと年齢(70歳 vs 69歳)と,体格(体表面積1.70m2 vs 1.65m2)が同程度で,瘤径(4.3 vs 5.3cm)が,小さめのAAAに対して行われ,経口開始日(1.3日 vs 2.7日),トイレ歩行開始日(2.1日vs 4.6日),室外歩行開始日(4.3日vs 9.1日)は有意に早く手術時間(231分vs 257分)に差は認められなかった.MIVS中によるAAA手術は,術後のQOLの向上を認め,有用な手技であると考えられた.

索引用語:低侵襲血管外科手術,腹部大動脈瘤,腹部エコー

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