ステントとステントグラフトについて

ステントとステントグラフトについて

 ステントとは、19世紀のイギリスの歯科医Charles R. Stentに由来する、内腔を保持するための小さい器具の総称です。ステントの多くは動脈が狭くなった部位(心臓、頚、腎、下肢など)を拡張する目的で使用されますが、悪性腫瘍で食道、気管、消化管が狭くなった場合に使用されるステントもあります。ステントは自己のバネ力で自然に拡張するものと、バルーン(風船)で拡張して、その形状を保つものがあります。素材はステンレススチールやニチノール合金(MR検査可能)などでできており、体内に生涯留置される様式になっています。

 下肢の動脈が閉塞/狭窄した場合に、血流改善を目的にステントを留置します。腸骨動脈(骨盤内の動脈)のステント治療の成績は良好で、しかも局所麻酔で実施できますので、現在では人工血管によるバイパス手術より多く行われています。一方、大腿動脈(ソケイ部より足側)にステントを留置した場合には、大腿の筋肉の収縮、圧迫によってステントが破損して閉塞する危険性があります。2012年大腿動脈用ステントが初めて認可されましたので、今後、より多く行われるようになると思われますが、実施は現在の症状を適切に判断して慎重に行うべきでしょう。

 ステントグラフト手術とは、ステントと人工血管(グラフト)を組み合わせた器具(ステントグラフト)を用いて、カテーテル操作によって、動脈瘤を血管の内側から治療する手術法のことです。腹部では大きく切開することなく、また、胸部では、肋骨を切らずに、体外循環(人工心肺)を使用しないで治療できますので、患者さんにとっては体に優しい治療法と言えます。心臓(冠動脈)のステントと異なり、大動脈瘤のステントグラフトはシース(挿入するための管、鞘)が6-9ミリ強と太いので、通常、ソケイ部を外科的に切開して実施します。また、ステントグラフトで治療可能な動脈瘤には、それに適した形、部位がありますので、血管外科医とご相談下さい。

 ステントグラフト手術の詳しいことは、日本ステントグラフト実施基準管理委員会のホームページをご参照下さい(http://stentgraft.jp/general/)。

このページは健康に関する一般的な情報の提供を目的としています。疾病の治療については必ず医師の診断を受けて、その指示に従ってください。