日本血管外科学会学理事長就任のご挨拶
-Make Vascular Surgery Great-


特定非営利活動法人
日本血管外科学会
理事長 大木 隆生

 2026年の日本血管外科学会理事会での理事長選挙とその後の社員総会を経て、7代目となる理事長を拝命しました大木隆生です。
 わたしは12年間米国で血管外科医として活動しましたが、そこで体験したものはまさに外科学の王道として、院内・社会から尊敬され、羨望の眼差しを浴びる血管外科医でした。また、約160ある医科大学の全てに血管外科教授が存在し、その地位は確たるものでした。2006年に帰国し慈恵医大血管外科教授に就任しましたが、それは全国80医科大学のうちの例外的5つの一つに過ぎませんでした。また当然のことながらその待遇も地位も特別なものではないどころか多くの病院において血管外科は外科学講座あるいは心臓血管外科講座の中の「窓際」的診療科でした。

 我彼の違いに愕然としつつ、血管外科診療の社会的意義と奥深さを確信していましたので、挫けることはありませんでした。そして「I have a dream、それはある日、血管外科が外科学の王道となり血管外科医が尊敬される事を」と願い続けて参りました。

 2006年の帰国時にタイミングよく日本初の大動脈瘤ステントグラフトが薬事承認を受けたこと、食生活の欧米化と高齢化により患者数が劇的に増加したこと、さらにNHKプロフェッショナル仕事の流儀で「命を賭けて命を繋ぐ:血管外科医 大木隆生」が大きな反響を受け、これに続いてメディアで血管病が注目されるようになった事も相まって「窓際」に徐々に光が当たるようになりました。その証左として、「血管病」という言葉が世間に浸透し、若手の血管外科志望者が増え、各地でステントグラフトを含む血管外科手術件数が大きく伸びました。血管外科医の私が第123回日本外科学会会頭に選出されたことと近年の血管外科の発展は無縁ではないと思います。

 しかし、依然として血管外科がスポットライトを浴びる機会は少なく、また、日本国内で血管外科を独立診療科として標榜する大学病院も施設も2006年当時から大きく増えていません。日本が未曾有の超高齢化社会に突入する中で、全身の血管病、動脈硬化を扱う血管外科は間違いなく日本の外科学のメインストリームにならなければならない領域の1つですが、その地位を確立するためにはこれからも歩みを続けなければなりません。

 そこで、こうした想いを込めて、慈恵医大で主催する第55回日本血管外科学会学術総会(オークラ東京)のテーマは「Make Vascular Surgery Great」としましたが、これはそのまま本会の理事長としても念頭に置いている最重要テーマの一つです。無論、本会の理念である「血管外科領域における安全で良質な医療の提供を通じて人々の健康と福利の増進を目指す」は、東信良第6代理事長が残された偉大な足跡を踏襲しつつさらに具現化したいと願っています。また、なぜ日本心臓血管外科学会とは別に日本血管外科学会が存在しているのか、という事も念頭に学会の方向性とあるべき姿を追求します。

 会員の皆様にとって、魅力ある活躍の場としての学会であるとともに、学会活動を通じて会員の皆様や患者さん、一般市民に貢献してゆけるよう尽力してまいります。私が慈恵医大に着任してから今年で22年目で、定年まであと2年です。私の有終の美は血管外科を少しでも偉大にすることで飾りたいと願っていますので皆様の温かいご理解とご指導、ご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。